社内ネットワークやWi-Fiの認証基盤として広く使われているRADIUS(Remote Authentication Dial-In User Service)。このRADIUSサーバーをSSL証明書(正確にはTLS証明書)と組み合わせることで、ユーザー認証時の通信を暗号化し、安全性を飛躍的に高めることができます。
この記事では、RADIUSの基本から、SSL証明書を活用した安全な設定方法や注意点まで、初心者にもわかりやすく解説します。
RADIUS認証とは?
RADIUSとは、ユーザーのID・パスワードをチェックしてアクセスを許可する認証プロトコルです。Wi-Fi認証(802.1X)、VPN接続、リモートアクセスなどで広く活用されています。
主な構成要素
| 機能 | 内容 |
|---|---|
| クライアント(NAS/AP) | Wi-Fiルーター、VPNゲートウェイなど |
| RADIUSサーバー | 認証処理を行う(FreeRADIUSなど) |
| 認証データベース | ユーザー情報(LDAP、Active Directory、ファイルなど) |
SSL証明書とRADIUSの関係
RADIUSは単体では通信の暗号化を行いません。特に802.1X/EAP(Extensible Authentication Protocol)を利用したWi-Fi接続では、認証フェーズをTLSで保護する必要があります。
よく使われるEAP方式
| 方式 | 特徴 |
|---|---|
| EAP-TLS | サーバー証明書+クライアント証明書(高セキュリティ) |
| PEAP | サーバー証明書+ID/パスワード(一般的) |
| EAP-TTLS | 拡張性あり(PEAPに似ている) |
どれもRADIUSサーバーにSSL証明書の設定が必須です。
FreeRADIUSでSSLを設定する手順(例)
ここでは、Linux環境に構築したFreeRADIUSを例に、SSL証明書の設定方法を説明します。
✅ ステップ1:証明書の準備
自己署名証明書を作成する場合
bashcd /etc/freeradius/3.0/certs
./bootstrap
商用またはLet’s Encrypt証明書を使用する場合
- 証明書(
server.crt)、秘密鍵(server.key)、中間証明書(ca.pem)を取得 /etc/freeradius/3.0/certs/に配置
✅ ステップ2:設定ファイルを編集
/etc/freeradius/3.0/mods-enabled/eap にある eap モジュール設定を変更します。
conftls-config tls-common {
private_key_file = /etc/freeradius/3.0/certs/server.key
certificate_file = /etc/freeradius/3.0/certs/server.crt
ca_file = /etc/freeradius/3.0/certs/ca.pem
}
private_key_passwordが必要な場合は適宜設定
✅ ステップ3:証明書の有効性を確認
bashfreeradius -X
- 起動時にエラーが出なければ成功
- ブラウザや
openssl s_clientで証明書情報も確認可能
安全な運用のためのベストプラクティス
| 項目 | 推奨内容 |
|---|---|
| 鍵の保護 | server.key ファイルは root だけが読めるように |
| 証明書の期限管理 | 自動更新(Let’s Encrypt)+cronによる再起動を設定 |
| クライアント証明書使用 | EAP-TLS を使用する場合、ユーザー端末ごとに証明書を発行 |
| フェールオーバー構成 | RADIUSサーバーを冗長化して障害に備える |
よくあるトラブルと対処法
| 問題 | 原因 | 対策 |
|---|---|---|
| 認証時に警告が出る | CAが信頼されていない | 端末にCA証明書をインストール |
| RADIUSが起動しない | 証明書の形式エラー | PEM形式を確認し、再発行する |
| TLS handshake failed | 鍵と証明書のペアが一致していない | 正しい組み合わせを確認する |
Wi-Fi端末側の設定について
SSL証明書はサーバー側だけでなく、クライアント(PC・スマホ)の設定にも影響します。
- EAP-TLS:クライアント証明書とCA証明書をインストール
- PEAP:サーバー証明書のCAを信頼し、ユーザーID+パスワード入力
証明書が適切でないと、接続時に「信頼できない証明書」などのエラーが表示されます。
まとめ
RADIUS認証は便利で強力な仕組みですが、SSL証明書を正しく設定してはじめて、安全な通信環境が実現できます。
特にWi-Fiやリモートアクセスに使われる場合は、証明書による暗号化を行わないと、ユーザー認証情報が平文で流れるリスクもあります。
本記事で紹介した基本構成を参考に、安全性の高いRADIUS環境を構築してみてください。


















