近年、多くのWebシステムで導入されている「リバースプロキシ」。これは、クライアントからのリクエストを受け取り、内部のアプリケーションサーバーに転送する仕組みです。
SSL証明書とリバースプロキシを組み合わせることで、セキュアかつ柔軟なアクセス制御が可能になります。本記事では、初心者にも分かりやすく、SSL証明書とリバースプロキシの連携方法について解説します。
リバースプロキシの基本
リバースプロキシは、ユーザー(クライアント)とWebサーバーの間に配置されるゲートウェイのような存在です。
たとえば、ユーザーが https://example.com にアクセスすると、リクエストはまずリバースプロキシ(例:NginxやApache)を経由し、そこからアプリケーションサーバー(例:Node.js、PHP)に転送されます。
この構成を採用する主な理由は以下の通りです。
- 複数のサーバーへの負荷分散(ロードバランシング)
- キャッシュによる高速化
- アクセス制御や認証の一元化
- SSL終端(SSL termination)
SSL終端とは?
リバースプロキシとSSL証明書を連携させる場合、よく使われるのが「SSL終端(SSL Termination)」という方式です。
これは、SSL通信をリバースプロキシで終了させ、その後ろにあるアプリケーションサーバーとはHTTP(非SSL)で通信する方法です。これにより、SSL処理の負荷がアプリケーションサーバーにかからず、管理が一元化できます。
SSL終端の流れ
- クライアントからリクエスト(HTTPS)
- リバースプロキシでSSLを復号化
- 後方サーバーにHTTPで転送
- レスポンスをHTTPSで再暗号化して返す
SSL証明書の設定例(Nginx)
nginx
server {
listen 443 ssl;
server_name example.com;
ssl_certificate /etc/ssl/certs/example.crt;
ssl_certificate_key /etc/ssl/private/example.key;
location / {
proxy_pass http://localhost:3000;
proxy_set_header Host $host;
proxy_set_header X-Forwarded-For $proxy_add_x_forwarded_for;
proxy_set_header X-Forwarded-Proto https;
}
}
この設定では、443番ポートでSSLを終端し、バックエンドのポート3000にHTTPでリクエストを転送します。
もうひとつの選択肢:SSLパススルー
SSLパススルー(SSL passthrough)は、リバースプロキシがSSLを復号せず、そのままバックエンドに転送する方式です。バックエンドで証明書を用意する必要があります。
メリット:
- 通信が常に暗号化されている
- クライアント証明書による認証が使える
デメリット:
- リバースプロキシでリクエスト内容を参照できない
- ロードバランシングやヘッダーの操作が困難
どちらの方式を選ぶべき?
- SSL終端:管理が楽で一般的なWebサイト向け(WordPress、CMSなど)
- SSLパススルー:通信内容に触れずに暗号性を保ちたいケース(医療、金融、VPNなど)
セキュリティ強化のための追加設定
SSLとリバースプロキシを連携させる際は、以下のようなセキュリティ設定を施すとより安全です。
- HSTS(HTTP Strict Transport Security)の有効化
X-Forwarded-ProtoヘッダーによるHTTPS強制Content-Security-Policyヘッダーの追加- TLS1.2以上の使用、弱い暗号スイートの無効化
まとめ:SSL×リバースプロキシは最強の組み合わせ
SSL証明書とリバースプロキシの連携は、現代のWebインフラにおいて最もバランスの取れたセキュリティ構成のひとつです。適切な設計と設定により、安全でスケーラブルなサービス提供が可能になります。
初心者の方でも、基本的な仕組みを理解しておけば、クラウド環境や自社サイトの運用にも自信を持って取り組めるようになるでしょう。

















